グリーンブック
この間、グリーンブックを見た。
監督はピーターファレリーという人。
「メリーに首ったけ」のコメディ映画が得意の人。
アカデミー作品賞、助演男優賞、脚本賞を取っているので、それは面白いのだろうと思った。
すごい乱暴なクラブの用心棒のイタリア系のトニーという人と
黒人の有名なやたら上品なピアニストのシャーリーという人の話。
トニーはお金が必要でシャーリーの南部でのツアーをする際の運転手をする。
トニーは保守的な家庭で育っていて、黒人差別を当たり前のようにする人だったが
このツアーを経てお互いに成長していくという話。
おもしろかった。
教科書的なシナリオで斬新さはないが、
相反する2人が出会いお互いに成長するというバディロードムービーでよくある話だったのだが、
基本に忠実な上に、いろいろな要素をうまくつかっているので、面白い。うまいなあと。
黒人差別についての話なのだがそこが説教くさくない。
よくこういう社会問題にふみこんだ映画というのはそこに焦点があって
説教くさくておもしろくなかったり、堅苦しかったりしてあまりいい印象はなかったりもするのだが、
この映画はあくまで、トニーとシャーリーの2人の話で、
キャラクターの一部として黒人というものがあるという印象。
なので、この映画は白人が黒人を救う話だとか、そもそも綺麗事の話だとかというところで、
批判もあるらしい。
実際に「ブラッククランズマン」のスパイクリーなどは大批判だったそう。
ただ僕は日本人なので、そこの人種問題にデリケートではないので、そこは気にならない。
し、ピーターファレリーもそこは自覚していたそう。
要は、人種問題を取り上げる映画ではなくあくまでエンターテインメントなのだと思うのだが、
それでも批判が起こったりするのはやはり人種差別というものはアメリカの闇なのだろう。
映画を作るときのテーマや題材にはやはりかなり気を使わないといけない。
これは一昨年の浜田。
何にしたってこの映画はよくできているしおもしろいと思う。
色々な小道具がよく効いている。
ピアノ、手紙、フライドチキン、拳銃、グリーンブックなどなど
フライドチキンはそもそも黒人の奴隷用の食べ物とのことで、
そのフライドチキンを黒人のシャーリーが不潔で食べれないとかいうシーンは笑ってしまうのだが、あれもかなりの勇気がいるシーンだったのだろう。
特に、手紙のやり取りが好き。
手紙を書いている2人のやりとりも笑ってしまうのだが、
その一連のシーンで2人の関係性がわかるし、
トニーの成長が見て取れるようになる。
そして最後のトニーの奥さんとシャーリーの笑いながらもほろりと泣いてしまうシーンにつながっている。
なかでも台詞のやりとりでいいなあと思ったのが、
「それは悪いのか?」
「いや、最高だ」
というシーン。
これは2人のキャラクターを暗喩していると思う。
白人だけど粗暴で盗みもするよっぽど白人のイメージに近いトニーと
黒人なのに、教養が深くマナーのいいシャーリーのキャラクターと被っている。
ステレオタイプに収まる必要はないんだよと。
どんな人種の人間でもそれぞれいろんな形があっていいんだという意味が込められているようでいい。
シャーリーがなぜ南部でツアーをしようというのかという理由にもなっている心の葛藤を救ってあげているようでいい。
綺麗事の映画ではあるのだけれど、作り手がこの話を真剣に愛しているのがわかるし、面白くしようとする熱意が伝わってくるほんとうにいい映画だった。
また見たいと思う。なあ。